はじめに
デール・カーネギーといえば、「人を動かす」。「人を動かす」といえばビジネス書ではの元祖で歴史的名著として知られています。この「話し方入門」は1926年に原型が出版されており、1936年の「人を動かす」よりも前に出版されたものになっています。「人を動かす」よりも、スピーチに特化していますが「人を動かす」の原型が見えます。創元社、市野安雄訳、文庫版で読みました。
こんな人におすすめ
- 人前で話すのが上手になりたい。人前で話す機会があるが失敗してしまう。
- 人に話して伝えることが苦手。
- 何かしてもらいたいときに人にうまく伝えられない。
内容と感想
話す目的を明確にする
およそ話というものは、話し手がそれに気づいている、いないにかかわらず、次に四つのうちどれかを目的にしています。
一、何かをわからせる
二、感銘を与えたり、納得させたりする。
三、行動を起こさせる
四、楽しませる
第10章p241
話す大前提として、何の目的があって話すのか考えることが必要です。このブログは話すではなく書くですが、この本を読んでもらう、本の内容を実践してもらうといった目的があります。話しているうちに、話すことが目的となってしまい、目的を見失ってしまうことがよくあります。初めに明確にして意識して話したり、話す準備をする必要があります。
例えば後輩に注意しているときは、次回に同じミスをしてほしくないのでそのための行動を起こさせることを目的としています。(話しているうちに目的を忘れて、指摘するだけになってしまうこともありますが…)
スピーチの成功は自信から、自信は周到な準備から
自信は周到な準備から
2章タイトル
「戦術は科学であり、計画され考え抜かれたものでなければ成功しない」とはナポレオンの言葉。このことは戦いと同様スピーチについても同様である。
p80
この本の根幹で、これに尽きる。という内容です。スピーチの成功は小手先のテクニックよりも、とにかく準備、周到な準備、練習が必要。
どんなことについてもいえることで、何かをするのに自信をもって行うことは必要で、そのためには準備が必要。自信のない人の言葉はだれも聞いてくれないし、誰も動かせないのだと思います。
一つの文章をは百四回書き直す
言おうとすることを明確に話し、自分の考えを非常に微妙な意味まで表現するするように努力しましょう。(中略)アメリカの女流作家ファニー・ハーストは時には五十回から百回も文章を書き直すことがあると話してくれました。
第12章 p315
書くことを生業とする作家の方でさえ何度も書き直すことがあるということです。そうでない私たちは何度も何度も推敲して、直して、試してみる必要があるのだと思います。話すことは日々繰り返し行っていることなので、毎日振り返ってどういう言い回しにしたらよかったのかということを考えてみる時間を作ってみるのもいいかもしれません。
成功には記憶力が必要
第3章は記憶力の増進についての、技術的な方法が列挙されています。なぜ、記憶力が必要かについて明確には書かれていませんが、スピーチを行うのにメモを見ながら行うわけにはいかないでしょうから、そのために必要ということかと思います。
休みなく反復を続けるという方法は、適切な間隔をとって反復するよりも、同じ成果を上げるのに、時間もエネルギーも二倍必要という事実を明らかにされたのです。
p96
上記はある学者の実験、研究結果に基づく事実です。どんなことに対しても応用できそうなので、記憶しておきたいです。
聴衆に合わせた言い回しが必要
洗練された美しさを求める現代の聴衆は、昔流行したような凝った言い回しにはもはや耐えられないでしょう。
第6章 p135
話す目的が明確になっていて、相手が決まっているのなら、聴衆が聞きやすい話し方にするべきです。私は職業柄、会計の専門用語を専門でない人に話す機会が多いです。その際は、専門用語を省いて例を交えながらわかりやすく話す必要がありますし、同僚と話すときは逆に一言で表せる専門用語を使えるなら使うべきです。
おわりに
話し方入門という内容でしたが、何かを成し遂げるということについて抽象化された方法論が書かれています。とにかく、周到な準備から出てくる自信はどんなことに対しても必要だと思います。自身は他人に対しても、自分自身に対してもよい影響を及すと思います。一つの自信はほかの事柄への自信にもつながると思います。